東京大学工学部システム創成学科 編入体験記(令和4年)高専テクノゼミ現役講師体験談

 こんにちは、令和4年度東京大学工学部システム創成学科に合格した宮川爽馬です。​​今回は高専から東京大学編入試験に合格するまでの体験談について書こうと思います。高専から大学編入を考えている高専生にぜひ読んでいただければと思います。

自己紹介

在学高専・学科:長野高専 電子情報工学科

得意科目:英語、数学

苦手科目:国語

趣味:サッカー観戦、音楽を聞くこと

高専での順位

1年:1位

2年:1位

3年:1位

4年:1位

5年:1位

高専からの大学編入で東京大学を選んだきっかけ

高専入学当初は、漠然とどこかの大学に編入できればいいなと考えていましたが、東京大学への編入は全く考えていませんでした。しかし、高専の定期テストやレポートは手を抜かずにやっていたので、高専1、2年次の成績でどちらも1位をとる事ができました。

この事ががきっかけで、勉強に対するモチベーションが上がり、自分に対する自信もついた気がします。さらに、ある先生から「今から本気を出せば、君なら東大でも京大でも目指せる」と言っていただき、このとき「どうせ勉強して編入するならできるだけ上を目指そう」と決心しました。

さて、ここからは数ある上位大学の中から東京大学のシステム創成学科を選んだ理由についてです。私は、高専でも学びを通して、基礎的な工学の知識や技術を身につけることの重要性を認識すると同時に、今度はそれらを実際の社会問題の解決に応用できるエンジニアになりたいと志すようになりました。

システム創成学科のカリキュラムでは、情報工学などの工学基礎科目に加え、経済学、経営学などの社会科学系の講義も用意されています。さらに、実際に自分の手を動かしながら社会問題の解決に挑むプロジェクト演習型の講義も用意されており、このような経験を学生のうちからできることに大きな魅力を感じました。

以上の理由から、この学科であれば高専で学んできた情報工学に関する知識や技術を深めることができるとともに、文系・理系の垣根を超えて自らの知識や経験の幅を広げていけると考え、東京大学のシステム創成学科を選びました。

東京大学編入の併願校とその理由

私は併願校として筑波大学の理工学群社会工学類と、東京都立大学のシステムデザイン学部情報科学科を選びました。併願校としてこれらの大学を選んだ一番の理由は、試験科目が東京大学と類似していることです。

東京大学システム創成学科の試験科目は数学・英語の2教科のみで、私が選んだ併願校も数学・英語のみで受験可能です。私は編入試験対策として物理や専門を積極的に勉強していなかったため、数学・英語のみで受験できるのは魅力的でした。

また、筑波大学と東京都立大学の編入試験は英語の点数をTOEICの点数で代用するという共通点があります。私は高専在学時にTOEICでそれなりの高スコアを獲得できていたため、かなり安心感がありました。さらに、筑波大学の理工学群社会工学類は東京大学システム創成学科とカリキュラムが似ていたことも理由の一つです。

高専から、東京大学編入の教科別試験対策法

数学

東大編入の数学に関しては、高専1〜4年で学ぶ数学の定期テストレベルの内容はほぼ完璧に理解できていることが前提になると思います。僕の場合、数学の定期テストはある程度真面目に取り組んで内容を定着させることができていたため、編入勉強のスタートがだいぶ楽になりました。

基本的な内容が定着してきたら、参考書や問題集による演習に入りましょう。東大編入の数学では出題される問題の分野が大体決まっていて、微分方程式、確率統計、複素解析、線形代数の4分野です。

具体的な参考書は、定番なものでは「編入数学徹底研究」や「編入数学過去問特訓」はこれら4分野をある程度網羅できるためおすすめです。ただし、これだけでは確率統計や複素解析の分野は不十分であると考えられるため、分野ごとに参考書や問題集を用意して取り組むことをおすすめします。

僕は「工学系学生のための複素関数攻略への一本道」、「細野真宏の確率が本当によく分かる本」や、マセマの複素関数・確率統計などを使用していました。

問題集による演習がある程度終わったら、過去問による演習に入りましょう。過去問を何年分か解いているうちに、東大編入の数学の雰囲気や、問われやすい内容の傾向などがつかめてくるかと思います。

ある程度傾向がつかめたら、本番と同じように時間を測りながら模試として過去問を解くことをおすすめします。普段から時間配分を意識した模試を経験しておくことで、試験本番でも普段どおりの実力が出せるようになるかと思います。

英語

東大編入の英語では出題される問題が大体決まっていて、英文和訳、和文英訳、長文読解の3つです。英文和訳、和文英訳に関しては、それぞれの問題に関する参考書や問題集によって勉強するのがいいと思います。

私は英文和訳は「ポレポレ英文読解プロセス50」と「英文読解の透視図」を、和文英訳は「英作文ハイパートレーニング和文英訳編」と「最難関大への英作文ハイパートレーニング」を使って問題の解き方などを身につけました。

また、3つの問題全てに共通して言えることとして、単語力の底上げが重要だと思います。私は「鉄壁」という英単語帳を使って単語力を強化しました。単語はただ覚えるだけでなく用法も頭に入れて、自由に英作文ができるようになることが重要だと思います。

 また、東大編入の英語の試験問題はScienceなどの有名な科学雑誌からの引用である場合が多いので、普段からそういった文章を読み慣れていると多少有利になります。私は、高専の図書館においてあったScientific Americanという科学雑誌を読むことを習慣にしていました。

面接

東大編入には一次試験(筆記試験)と二次試験(面接試験)があり、一次試験に合格した人だけが二次試験に進めます。例年一次試験と二次試験の間が2週間程度しかないため、一次試験の前から面接の準備も進めておくべきだと思います。私は一次試験の前後で4人の高専の先生にアポイントを取って面接練習をしていただきました。高専の先生は丁寧にお願いすれば快く対応してくださるため、積極的にお願いをしてみるべきだと思います。

面接の内容は、東大の場合は事前に志望調査票という書類を志願時に提出し、その内容について深堀りされることが多いようです。ですので、志望調査票には自分が面接で答えやすいような内容を書いておいたほうが良いです。逆に、あまり適当なことを書くと面接で深堀りされたときに自分が困ることになるので慎重に吟味して提出するべきです。 

東京大学工学部システム創成学科編入試験当日

数学

前述のとおり、東大編入の数学では例年微分方程式、確率統計、複素解析、線形代数の4分野について問われ、私の年も同じでした。試験時間は2時間ですので、1つの大問に使える時間は約30分となります。

大問1(微分方程式):誘導に従って特殊な微分方程式を解く問題でした。例年は比較的簡単な問題が出ていましたが、例年よりは明らかに難化していました。

大問2(確率統計):ベイズの定理を使って条件付き確率を求める問題数でした。問題の状況設定を正しく読み取れば比較的容易な内容であったと思います。

大問3(複素解析):簡単な複素数の問題や、留数定理を使う問題などが出ました。問題構成・難易度を含めて例年通りだったと思います。

大問4(線形代数):対角成分がaで、それ以外の成分が1であるn次正方行列が与えられ、固有値・固有ベクトル等を求める問題でした。最後には上三角行列の逆行列を求める問題でしたが、時間が足りずに解ききれませんでした。難易度はやや易〜例年通りだったと思います。

英語

前述の通り、東大編入の英語は例年英文和訳、和文英訳、長文読解の3つの大問構成で、私の年も同じでした。試験時間は1時間半ですので、1つの大問に使える時間は約30分となります。

大問1(英文和訳):Zoom疲れ(Zoomでのビデオ会議などから生じる独特の疲労感)に関する文章の下線部を和訳する問題でした。和訳すべき下線部はA〜Fの6つで、難易度は例年より簡単だったと思います。また、試験後に調べてみたところ、National Geographicという月刊誌の文章でした。

大問2(和文英訳):量子コンピュータに関する文章の下線部を英訳する問題でした。難易度は例年通りだったと思います。

大問3(長文読解):微生物や細菌などに関する長文読解の問題でした。難易度は例年より簡単だったと思います。また、大問1と大問3はコロナウイルスのパンデミックという時事を意識した出題だったと思います。

面接

面接室に入ると、10人程度の面接官がL字型に座っており、かなり圧倒されました。面接時間は一人あたり10分〜15分程度だったと思います。実際に聞かれた内容は、噂通り志望調査票に書いたことを深堀りするような質問がほとんどだったと思います。覚えている限りで、聞かれた質問を列挙します。

・志望する学科と志望理由

・システム創成学科で志望するコースとその理由(システム創成学科には3つのコースがあります)

・高専時代に参加した国際プロジェクトについて詳しく説明して(志望調査票に書きました。以降、このプロジェクトについて2、3問深堀りされました。)

・TOEICの点数が高いが、英語は得意かどうか

・東京大学に入って何がしたいか

 全体を通して面接の雰囲気は意外に和やかな感じだったので、すべての質問に落ち着いて答えることができました。また面接官は10人いましたが、実際に質問をしてきたのは3人程度でした。面接は、基本的に自分が用意してきた内容について落ち着いてハキハキと答えれば、あまり心配することはないと思います。実際、例年も面接で不合格になることはあまりなく、私の年も面接に進んだ20人は全員合格という結果でした。

高専から大学編入を目指しているみなさんへ

 私の編入学試験に関する一連の経験から、皆さんに伝えたいことは主に3つあります。1つめは、編入学試験は努力すれば結果が出やすい試験である、ということです。編入試験に向けて勉強をしていると、全体の中における自分の立ち位置がわかりにくいため自分の努力が報われるかどうかを不安に思うことがあると思いますが、私も同じでした。

しかし、実際に試験を受けてみると志望した3つの大学全てから合格をいただくことができ、努力が報われた形になったと思います。今になったからこそ言えますが、大学編入は想像しているほど困難な道ではないと思ったので、大学編入を目指しているみなさんは安心して努力を継続してほしいと思います。

2つめは頼れる人には頼ろう、ということです。みなさんは高専生ですので、周りにはたくさんの優秀な友人や信頼できる先生方がいると思います。大学編入はやはり普通の大学受験に比べればマイナーな道ではあるので、勉強を進める上で孤独を感じてしまうことがあると思います。

そういったときは、同じ志を持つ友達と一緒に協力して勉強をしたり、信頼できる先生に質問したりするなどして、どんどん周りを巻き込むべきだと思います。特に高専の先生方は相談や質問をすれば必ず親身になって答えてくださるので、積極的に頼ってみるべきだと思います。

3つめは敢えて困難な道を選択してみてほしい、ということです。高専入学当初は、まさか私が東京大学を目指して受験勉強をし、合格することになるとは想像もしていませんでした。しかし、今思えば東京大学を第一志望にして本当に良かったと思います。

東京大学に入学してからは、多様な知識や関心領域を持ったとても優秀な友人や先生方に出会い、刺激的な日々を過ごしています。みなさんには、自分の限界を容易に決めず、できるだけ高い目標を持って勉強を続けてほしいです。そのほうが、その過程でもその後の進学先でも圧倒的な成長を得られると思います。

最後になりましたが、みなさんの努力が無事に実を結ぶことを祈っています。頑張ってください!

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